略歴

photo by Takashi Mochizuki ©2006

平出隆 Takashi Hiraide

1950年、福岡県生まれ。一橋大学在学中に雑誌「ユリイカ」に詩と詩論を発表。みずから版元・書紀書林を構え、詩誌「書紀」や「書紀=紀」を刊行、70年代の詩的ラディカリズムの一方の極となる。「戦後現代詩の正系の嫡子」(清岡卓行)ともいわれたが、その後、散文と詩との境界の検証を重ねるにつれ、モダニズムの歴史化としての「現代詩」への批評とそこから離れての思考の必要を論じ、実践するに至る。とくに、脱=散文詩の実験を通じてさまざまな形式を静かに擾乱する方法を展開。詩論、随筆、紀行、手紙、日記、小説、短歌、俳句、翻訳、美術などの混じりあう中間領域での言語作品の制作をつづけている。加納光於、河原温、ドナルド・エヴァンズなどの美術家とのあいだに成った書物がある。また、文芸書装幀の仕事もあり、自装による著書『伊良子清白』は、2005年春、ライプチヒでの国際ブックフェアにおける「世界でもっとも美しい本」賞の候補となった。1985年には、アイオワ大学のInternational Writing Programに招待詩人として参加、1998-99年にはベルリン自由大学客員教授としてベルリンに居住。2005年秋、「大江健三郎の推奨する詩人」として、共にオーストリア・インスブルック近郊ハルでの文学祭Sprachsalzに参加。2006年春、人類学者の中沢新一を多摩美術大学に招聘、芸術学科の刷新を行なうとともに芸術人類学研究所を創設、《野外を行く詩学》部門を担当し、代表として《フィールド・ミュージアム・ネット》を展開する。2008年9-10月、ソウルでの第1回東アジア文学フォーラムに日本の作家の一人として参加。2008年10月より《野外を行く詩学》研究会を月例で主宰しはじめる。
詩論集『破船のゆくえ』『光の疑い』『多方通行路』などのほか、翻訳刊行された作品集『胡桃の戦意のために』『葉書でドナルド・エヴァンズに』(以上英語)『猫の客』(フランス語、スペイン語、英語など22カ国語)をふくめて、著書多数。