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大江健三郎が語る平出隆の詩と散文

Sep.16-18, 2005
Kenzaburo Oe introduced Takashi Hiraide to German readers just before TH’s poetry reading at «Sprachsalz» in Hall, Austria.

2005年9月16日から18日にかけて、オーストリアのハルで開催された文学祭 «Sprachsalz»。最終日の平出隆の朗読に際して、共に参加した大江健三郎はその詩と散文の特質について、ドイツ語圏の読者に語った。

《大江健三郎でございます。私は小説家でありまして、平出さんよりも30歳くらい年上でしょうかね、20年かそこいら年上なんです(注;実際には15歳の違い)。
 日本ではですね、小説家と詩人のあいだにはあまり友人関係がないと思いますね。それはいいんですよ。しかし、その結果、詩のスタイルと小説のスタイルがお互いに影響をしあうことがありませんでした。ところが、平出さんは詩人ですが、彼は散文も書きます。私の考えでは詩の側から、詩の側から、散文の新しいスタイルを作ろうとしてきたのが平出さんです。
 ですから、彼がこれから詩を読みますが、その多くは散文による詩の形をとっています。しかも散文でいながら、音楽があります。その点、ドイツの詩人、たとえばリルケのような詩人と、彼はつながっているんじゃないでしょうか。
 彼の書く散文はですね、非常に透明で静かです。ここ(注;ドイツ語に訳された日本文学アンソロジーの本 ≪Nach Japan≫ )に、ドイツ・ベルリンでの生活を書いた散文がひとつ入っています(注;「この家」『ベルリンの瞬間』所収)。非常に透明で静かな文章です。注意深く読まないと、間違えて理解します。
 ここにですね、「n」という頭文字の、或る存在が書かれているんです。そこで私は、先ほど挨拶しまして、大きい声で挨拶しまして、この「n」というのは彼の奥さんだろうか、それとも犬だろうか(笑)、といったんです。ところが、実際には猫でありました(笑)。
 みなさん、注意して、猫か、犬か、それとも奥さんか(笑)、注意深く聴きながら、彼の朗読を楽しんでください。ダンケシェン。(拍手)》